彫刻

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彫刻

彫刻(ちょうこく)とは、美術的な鑑賞を目的として、様々な素材を用いて制作された立体作品のこと。ただし、一般的には、鑑賞を目的として制作されたとしても、工芸作品や陶芸作品は除かれることが多い。

その素材は、といった自然のものから、石膏金属ブロンズなど)、樹脂合成樹脂)、ガラスなどの人工のものまであり、複数の素材をあわせて用いるケースもある。

手法も、彫ることを基本としながら、削る、はる、溶接する、つぶすなど、様々である。

また、彫刻の対象も、もともとは、人体かそれに類するもの(など)を主として、他の生き物を含めて、具体的な「」であることがほとんどであった。しかし、20世紀になると、具体的な物を対象としない抽象的な彫刻(抽象彫刻)も多く制作されるようになっている。さらに、「歌う彫刻」(ギルバート・アンド・ジョージ)のように、人間そのものを彫刻とみなしているような、特殊なケースもある。

現在では、彫刻と呼ぶべき作品があまりに多様化しているため、「彫刻」という用語にそぐわないケースも多く、単に「立体作品」「立体」と呼ぶこともあるほか、中には設置空間全体へ拡散しインスタレーションなどへと化したものもある。

彫刻の定義[編集]

絵画との区別[編集]

絵画平面作品で、彫刻は立体作品であるから、抽象的には区別は簡単であるが、現実には困難なケースがある。
カンバスにものを貼り付けるケースがあるが(例えば、コラージュなどを想起いただきたい)、これが、1~2センチの盛り上がりであれば、絵画作品であるということについて問題は生じない。通常の油絵であっても、絵の具がその程度盛り上がっている作品は珍しくない。
しかし、この盛り上がりが、30センチや1メートルに達したとしたら、誰しも、絵画作品と呼ぶことには首を傾げるであろう。また、描かれている物(例えば洋服)の一部が実物となってカンバスからはみ出ている(例えば、洋服を貼り付けて絵からたらしてある)ようなだまし絵的な作品も、そのはみ出し方によっては、絵画とはいいにくいであろう。
以上のようなことから、境界線上の作品については、絵画か彫刻かという区別にはあまり意味はないとする論者もいる。

建築との区別[編集]

彫刻は立体藝術であり、建築は空間藝術である、という解釈が一般的である。ただ、この区別ではヘンリー・ムーアの『頭』などはどうなるのか?という問題も生じる。

レディメイドは彫刻か?[編集]

マルセル・デュシャンが始めたとされるレディ・メイドが彫刻であるかどうか、という問題は、レディ・メイドが美術作品であるかどうかという問題に解消されるのかもしれない。とするならば、レディ・メイドは、彫刻作品であるといえるであろう。

剥製は彫刻か?[編集]

剥製は自然の造形を保存したものだから彫刻ではない。通常剥製は、学術的・装飾的な目的により制作され、再現性が重視される。その意味から外れて製作者が何らかの意図を挿入し、造形したとすれば、その時点でそれは剥製ではない。

ぬいぐるみや人形は彫刻か?[編集]

一般に、ぬいぐるみ人形は彫刻ではない。遊びのための玩具という実用品であり、作者の芸術的思想や意図のために制作したものではない場合が多いからである。よくできた人形でも、彫刻などの純粋芸術よりは、「工芸」や「装飾芸術」に含まれることになるだろう。 しかし、制作者が、美術的な目的により制作したり、他の彫刻作品の一部として制作した場合には、彫刻と呼べるケースもあるであろう。

ただし、人々がぬいぐるみや人形に対して感じている情念は、かつて人間がを刻んだ彫刻に感じた情念や霊性、あるいはピグマリオンの伝説などのように人間そっくりの彫刻に感じた情念に通じるものがあり、受容のされ方においてぬいぐるみ・人形と彫刻との境界にはあいまいな部分がある。

没後(死後)鋳造問題[編集]

彫刻の中でも、ブロンズ彫刻と呼ばれるものは、彫刻家の製作は石膏でできた「石膏原型」までであり、それ以降のブロンズ化は「鋳造師」と呼ばれる職人の仕事となる。そのため石膏原型があれば複製が可能であるため、彫刻家が存命のうちにその承認の下に鋳造された作品を「生前鋳造」、没後(死後)に鋳造された作品を「没後(死後)鋳造」として厳密に区別する。

「生前鋳造」こそが本物であり、例えばロダン作の「考える人」は、現在数多くの美術館で見ることができるが、ロダン美術館によって真正品と認定されているのは世界に21体しかない。フランスなどでは既に法制化され、鋳造数の制限などがされているが、日本では著作権関連の法整備の遅れや認知の弱さによって明確な定義がなされていないのが現実である。

石膏原型は鋳造すればするほど痛む上に、彫刻家の意図以上に濫造される場合も多く見受けられ、問題となっている。群馬県立館林美術館では、フランソワ・ポンポンがその遺言で禁じていた没後(死後)鋳造の作品を多く収集してしまい(偽作のレプリカ品まであった)、常設展示を頓挫せざるをえない状態となっており物議をかもした。

関連項目[編集]