ベニテングタケ

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Amanita muscaria

ベニテングタケ.jpg
種の保全状態評価
地質時代
 - 
分類
菌界 Fungus
担子菌門 Basidiomycota
菌じん綱 Hymenomycetes
ハラタケ目 Agaricales
テングタケ科 Amanitaceae
テングタケ属 Amanita
ベニテングタケ muscaria
変種
品種
学名
Amanita muscaria (L. : Fr.) Hook.
和名
ベニテングタケ
英名
Fly Agaric
下位分類群
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ベニテングタケ(紅天狗茸、学名Amanita muscaria)は、ハラタケ目テングタケ科テングタケ属キノコ。毒性、向精神性の担子菌類である。 アジア、ヨーロッパ、北アメリカなどの各地で広くみられる。日本の方言名アシタカベニタケ、英語ではフライ・アガリックと呼ばれる。ヨーロッパでは、毒キノコにもかかわらず幸福のシンボルとして親しまれている。[1]「ベニテングケ」との表記は誤り。

特徴

主に高原のシラカバマツ林に生育し、針葉樹広葉樹の双方に外菌根を形成する菌根菌である。深紅色のにはつぼが崩れてできた白色のイボがある。完全に成長したベニテングタケの傘はたいてい直径8-20センチであるが、さらに巨大なものも発見されている。は白色で高さ5-20センチ、ささくれがあり、つばが付いている。根元は球根状にふくらんでいる。おもに北半球の温暖地域から寒冷地域でみられる。比較的暖かい気候のヒンドゥークシュ山脈や、地中海、中央アメリカにも生息する。近年の研究では、シベリア、ベーリング地域を起源とし、そこからアジア、ヨーロッパ、北アメリカへ広がったと考えられている。[2]オーストラリアや南アフリカなどの南半球へも広く輸送され、世界各地でみることのできるキノコとなった。

毒性

主な成分はイボテン酸ムッシモールムスカリンなどで、食べると下痢嘔吐幻覚などの症状をおこす。 比較的古い(昭和中期)資料では、猛毒あるいは致死性の高い毒キノコと表記しているものがあるが、長野県のごく一部にて特別な方法を用いて食用とされる事例が存在する(塩漬けにして食用としている[3]。しかし不十分な知識で行わないことを警告する)ことを勘案し、あえて毒性を強く書くことにより事故を予防したものと見られる。ただし、それによってキノコの色彩の派手さこそが毒性の強さの指標となるような誤った認識を助長し、地味な色彩の毒キノコへの警戒心を弱めてしまった側面は否めない。ベニテングタケ中毒による死亡例は非常にまれで、北米では2件報告されているのみである。[4]

また、毒成分であるイボテン酸は非常に強い旨味成分でもあり(味の素などに使用されるグルタミン酸ソーダのおよそ16倍)味は大変美味である。そして少量の摂取なら深刻な中毒症状を起こさない(軽い嘔吐程度)ことなどから、長野県などでは塩漬けにして食用としている。しかし、微量ながらドクツルタケのような猛毒テングタケ類の主な毒成分であるアマトキシン類を含むため、長期間食べ続けると肝臓などが冒されるという。また、有効成分は水溶性であるため、加熱調理を加えれば部分的に解毒することができる。逆に、乾燥させると、イボテン酸がより強く安定した成分であるムッシモールに変化し、毒性が強化される。

ベニテングタケは、一般的には毒キノコとされているが、幻覚作用を起こすことでも知られる。東シベリアカムチャッカでは酩酊薬として使用されてきた歴史があったり、西シベリアではシャーマン変性意識状態になるための手段として使われてきたように、ベニテングタケはシベリアの文化や宗教において重要な役割を果たしてきた。また、趣味で菌類の研究をしていたアメリカ人銀行家、ゴードン・ワッソンは、古代インドの聖典『リグ・ヴェーダ』に登場する聖なる飲料ソーマの正体が、ベニテングタケではないかという説を発表した。人類学者は反論を唱えたが、1968年に著書が出版された当時は、広く信じられていた。

ベニテングタケは、マジックマッシュルームとは異なり、遊びや気晴らしに摂取されることは少ない。現在のところ、国連の国際法で未規制のため、ほとんどの国でその所持や使用は規制されていない。

なお、殺ハエ作用を持つことから洋の東西を問わずハエ取りに用いられてきた[5] (これはイボテン酸によるもの。他に、ハエを誘引する物質も発見されている)。種小名および英名の「Fly Agaric」もこれにちなむ。

薬理作用

ベニテングタケには複数の生理活性物質がある。1869年に発見されたムスカリンが、中毒症状をおこす原因であると長い間信じられていたが、他の毒きのこと比較すると、ベニテングタケに含まれるムスカリンはごくわずかである。主要な中毒物質は、ムッシモールイボテン酸である。20世紀半ば、日本、イギリス、スイスで同時に発見されたこのふたつの物質が、中毒症状をおこす成分だと判明した。ムッシモールは抑制系神経伝達物質GABAアゴニスト、イボテン酸は、神経の働きを司るNMDA型グルタミン酸受容体のアゴニスト活性がある。

症状と治療

摂取すると30-90分程度で、吐き気眠気発汗、視聴覚や気分の変化、多幸感健忘といった症状があらわれる。より重い中毒では、混乱幻覚といったせん妄症状や昏睡がおき、症状は2日以上続く場合もあるが、たいていは12-24時間でおさまる。医療機関での治療は、胃洗浄がおこなわれる。解毒剤は存在しない。

大衆文化のなかにみられるベニテングタケ

ベニテングタケの赤地に白斑点という形状は、絵本やアニメ映画、ビデオゲームなどにしばしば登場することで、なじみのあるものとなっている。特に有名なものに、テレビゲームソフト『スーパーマリオブラザーズ[6]や、1940年のディズニー映画『ファンタジア[7]がある。 ルネッサンス期から、絵画の中でもしばしば描かれており、18世紀のアイルランド人作家の小説では、ベニテングタケの幻覚剤使用に言及した箇所が確認できる。ベニテングタケを食べた際、物体の大小が変化したという記録を残したMordecai Cubitt Cookenoの書物は、1865年の『不思議の国のアリス』のモデルになったと考えられている。[8]また、幸運のシンボルとして、1900年頃からクリスマスカードのイラストにしばしば描かれてきた。

脚注

  1. ヤマケイポケットガイド⑮ きのこ」より。
  2. Geml J, Laursen GA, O'neill K, Nusbaum HC, Taylor DL (2006) Geml J, Laursen GA, O'neill K, Nusbaum HC, Taylor DL Beringian origins and cryptic speciation events in the fly agaric (Amanita muscaria) Mol. Ecol. 15 1 2006 January 225–39 10.1111/j.1365-294X.2005.02799.x
  3. 講談社発行『科学大事典―MEGA』より。
  4. Cagliari GE. (1897). Mushroom Poisoning. Medical Record 52: 298.
  5. ヤマケイポケットガイド⑮ きのこ」より。
  6. Li C, Oberlies NH (2005) Li C, Oberlies NH [ The most widely recognized mushroom: chemistry of the genus Amanita ] Life Sciences 78 5 2005 December 532-38
  7. Ramsbottom J (1953) Ramsbottom J [ Mushrooms & Toadstools ] Collins 1953 1870630092
  8. Letcher (2006) LetcherAndy [ Shroom: A Cultural history of the magic mushroom ] Faber and Faber London 2006 0-571-22770-8

関連項目